遺産分割協議と遺言はどちらが優先されるか
1 原則遺言書が優先する
遺産分割協議が成立した後に、遺言書が出てきた場合、遺言書の内容が遺産分割に優先します。
そのため、遺産分割が有利な内容でまとまったとしても、遺言書が見つかった後は、それがひっくり返される可能性があります。
なお、手書きの遺言書(自筆証書遺言といいます)を発見した際は、速やかに家庭裁判所に検認手続きを行う必要があります。
2 遺言書が見つかった場合は相続税の支払いも変わる
また、遺言書が見つかり、その内容に従って相続する場合、相続税の負担割合も変わってきます。
そのため、遺産分割協議によって取得する財産額よりも、遺言によって取得する財産額が少ない場合は、更正の請求をすれば、払いすぎた相続税を返してもらうことができます。
他方、遺言書によって、はじめて財産を取得する方は、遺言書の内容を知ったときから、10か月以内に、相続税の申告が必要になります。
この点については、税務署への申告になりますので、一度、相続税に詳しい税理士にご相談された方が安心でしょう。
3 遺言書があっても全員が同意すれば遺産分割協議も可能
原則、遺言書の内容が遺産分割協議よりも優先します。
もっとも、相続人や相続人以外に財産を受けた人(「受遺者」といいます)、遺言執行者等の利害関係人全員が同意すれば、遺言書の内容と異なった遺産分割協議を行うことができます。
そのため、相続人や受遺者、遺言執行者全員で話し合い、遺産分割協議の内容で全員の同意を得ることができましたら、従来の遺産分割協議の効果が有効となります。
なお、全員の同意を得る際は、書面の形で残しておきましょう。
4 遺産分割協議をする前に遺言書の確認を!
このように、遺言書があると、せっかく成立した遺産分割協議が無効になるおそれがあります。
そうならないためにも、遺産分割協議を行う前に、遺言書がないか確認しておいた方が良いでしょう。
手書きの遺言書は、法務局に預けてある場合以外は、亡くなった方やご親族の誰かが保管している場合が多いので、事前に、ご親族に遺言書がないか確認をとるようにしましょう。
また、公正証書の遺言書の場合は、公証役場に問い合わせれば、遺言書があるかどうかが分かりますので、一度、お近くの公証役場に問い合わせてみることをおすすめします。